完璧主義は向上心ではない——「まず終わらせる」へ切り替える技術
「この問題集、隅から隅まで覚えないと気が済まない」 「1日でも計画が崩れたら、全部やり直したくなる」
真面目で優秀な受験生ほど、この完璧主義の罠に陥りがちです。一見、完璧を目指すのは良いことに思えます。けれども受験勉強において過度な完璧主義は、行動を遅らせ、自信を削る方向に働きます。合格していく受験生は完璧な人ではなく、「合格最低点を確実に取る」と割り切れる現実的な人です。
この記事では、完璧主義がなぜ成績の足を引っ張るのかを説明し、「完璧にやる」から「まず終わらせる」へ切り替えるための具体的な方法を紹介します。
1. 完璧主義には2種類ある
心理学では、完璧主義は大きく二つに分けられます。
一つは健全な完璧主義です。高い目標を持ちながらも、失敗したら自分を許し、改善点を見つけて次に進める。このタイプは成長し続けます。もう一つは不健全な完璧主義です。ミスを許せず、「100点以外は0点」と考え、他人の評価を過剰に気にする。このタイプは失敗を恐れて挑戦しなくなり、途中で止まってしまいます。
受験生が陥りやすいのは後者です。そしてこれは向上心ではなく、失敗への恐怖から来る自己防衛に近いものです。「完璧にやりたい」という気持ちの正体が「失敗するのが怖い」であるなら、まずそのことに気づくのが出発点になります。
2. なぜ完璧主義は成績の足を引っ張るのか
理由は三つあります。
第一に、着手と進行が遅くなります。「完璧に理解してから次へ進もう」と考えると、1ページに何時間もかけてしまい、試験範囲が終わらないまま本番を迎えることになります。受験は範囲を終えた人から有利になる競争ですから、進まないことそのものが失点です。
第二に、復習ができなくなります。一度の学習で完璧を目指すと、そこでエネルギーを使い果たし、最も大事な反復に回す余力がなくなります。記憶は触れた回数で決まるので、「1周を完璧に」より「3周をそこそこに」の方が、結果として定着します。
第三に、本番で自滅しやすくなります。試験中に解けない問題に出会ったとき、「全部解かなければ」という考えは時間配分を狂わせ、取れるはずの基礎問題まで落とさせます。本番の立ち回りについては試験当日の記事で詳しく扱いますが、土台にあるのは同じ完璧主義の問題です。
3. 「まず終わらせる」への切り替え方
切り替えのキーワードは「完了主義」です。完璧であることより、終わらせることを優先する考え方です。
具体的な目安として、まず「重要な部分から押さえて、全体の7割を取る」ことを目指してください。どの教科でも、頻出の基礎事項を押さえれば得点の大部分は確保できます。残りの細部を完璧にするには膨大な時間がかかるわりに、得点への寄与は小さい。合格最低点は多くの大学で6〜7割ですから、「7割を確実に」が最短ルートになります。
参考書の進め方も同じです。1周目で100%理解しようとしないでください。1周目は全体像をつかむ(理解度3割でいい)、2周目で重要事項を覚える、3周目で苦手をつぶす。薄いペンキを何度も塗り重ねるように進めるのが、記憶の仕組みに合ったやり方です。
4. ミスした自分を許す練習
完璧主義のもう一つの害は、ミスのたびに自分を責めて、立ち直りに時間がかかることです。ここには二つの対処があります。
一つは、ミスを「データ」として扱うことです。間違えたとき、「自分はダメだ」と人格の問題にするのではなく、「ここが弱点だと分かった」と情報の取得として捉え直す。間違えた問題だけを集めたノートは、自分専用の最高の教材になります。ミスは責める材料ではなく、宝の山です。
もう一つは、自分への言葉を変えることです。「なんでこんなミスをしたんだ」ではなく、「ミスに気づけてよかった。本番じゃなくてラッキー」。友達が同じミスをしたらかけるであろう言葉を、自分にもかけてください。自分への言葉の選び方は自信の記事で詳しく扱っています。
まとめ
大学受験は満点を取る試験ではなく、合格最低点を越えれば勝てるゲームです。今日からできることは三つ。「とりあえず1周終わらせる」ことを最優先にする。間違えた問題はノートに記録して弱点データとして扱う。1日の終わりに「今日できたこと」を一つ挙げてから勉強を締めくくる。
完璧な受験生は存在しません。未完成のまま手を動かし続けられる人が、結果として合格最低点を越えていきます。「完璧にやらなきゃ」と手が止まりそうになったら、ハードルを下げて、まず終わらせることから始めてください。
参考
- こころの情報サイト(国立精神・神経医療研究センター)「ストレスとセルフケア」 https://kokoro.ncnp.go.jp/health_howtocare.php