ドリームラーナーズの石原です。今回は、たくさんの問題演習に取り組んだのに結果に繋がらない問題の根本にある「抽象化」という技法を解説します。
問題演習の量をこなしてきた自信がある一方で、模試の成績はまだまだ目標未達成という人は、いわゆる「一問一等式スタイル」で問題に取り組んでいるのかもしれません。もう少し噛み砕くと私が問題視しているのは「この問題は、この解法」というように問題と解法をジグソーパズルのように当てはめていく思考を伴わない問題の解き方です。
「一問一答式スタイル」は、定期テストではそこそこの得点を挙げることができますが、模試および本番では通用しません。なぜなら、定期テストはイレギュラーな設問が少ないのに対して、模試および本番の問題はそもそも要求自体を読解する必要あるからです。これは、出題者が問題や学習内容の真意を理解することなく正答できないように工夫しているため。授業で練習した内容をチェックすることが目的にある定期テストとはワケが違うということです。
一問一答式スタイルを脱けだして模試や本番で通用する学力を鍛えるためには、前回説明した抽象的思考の応用である「抽象化」という技法に目覚めることが効果的です。簡単に説明すると抽象化は、いくつかの物事の共通点や法則性を見抜いて一言にまとめることです。
例えば「鳥取県の特産果物はナシ・スイカ・ブドウ」と覚えるのは一問一答式ですが、ナシ・スイカ・ブドウを「高温にならず雨量が少ない地域に適した果物」と一言にまとめるのが抽象化です。
このようにインプットを抽象化すれば、記憶の出し入れがスムーズになることで思考に深みが生まれ、捻った問で構成された試験に対応できるようになります。「Aという知識」「Bという知識」と個別に覚えているより、「A・Bに共通するパターンはXだ」と本質をまとめた状態で覚えている方が、初見の問題に当てはめやすくなります。共通する要素を見抜くことを「抽象化」と呼び、その要素を別の問題に当てはめることを「具体化」と呼びます。さらに抽象化の技法を磨いていくと、問題文の長々とした説明が何の概念を指しているのか、読んだ瞬間に閃くことができるようになります。
抽象化の習得は手間がかかりますが、学習というインプットの質を高めると同時に、試験というアウトプットの質を高められる非常に効率の良い訓練です。
抽象化を練習しよう!
抽象化の練習方法を、そもそも抽象的思考が鍵である数学を素材として説明します。
インプットについて
問題を解く時に公式を覚えて使いこなすことに苦労している人が少なくないのではないでしょうか。筆写したり、音読したり、素朴に丸暗記するのも悪くはないのですが、本番の試験では公式を利用するのに時間がかかってしまう恐れがあります。
そこで、抽象化を公式の習得に活用してみましょう。例えば数学では、二次関数・三角関数・指数関数それぞれの最大最小問題を、別々の解法として覚えようとするのが一問一答式の発想です。抽象化すると「①変数を一つに絞る ②その変数の定義域を確認する ③端点・極値を比較する」という共通の3ステップに整理できます。見たことのない関数の最大最小問題に直面しても、この手順を当てはめることで対応できるようになります。
同じことは歴史でも起きます。「フランス革命の原因」「ロシア革命の原因」をそれぞれ暗記するかわりに、「民衆の生活苦が限界を超え、支配体制への信頼が失われたとき革命が起きる」と抽象化しておけば、初見の問いにも応用できます。
ただし、抽象化は「用語を覚えなくてよい」という話ではありません。「定義域」「極値」の意味を知らなければ3ステップは使えませんし、「財政破綻」「民衆の不満」という概念を持っていなければパターンに気づくことすらできません。抽象化は、基礎的な用語・知識の上に成り立つ技法です。
アウトプットについて
数学の学習で『チャート式』や「Focus Gold」を黙々と大量に解いてきたけど結果に繋がっていない方にはぜひ試してみてほしい練習方法を紹介します。
問題の要求と解法を自分の頭で一言にまとめた後、類題に適用すると「学習によって問題を解ける状態になったかどうか?」をチェックすることができます。もし、類題の解答が上手にできない場合、問題と解法のいずれかの抽象化が適切でない=分かってないということです。
ただ、類題を適切に選択できていない場合もあります。そこで便利なのがチャート式です。チャート式は問題の型を、例題と類題のセットで1ページにまとめた構成です。例題の要求と解法を抽象化してから、それを利用して類題を解けるかどうかをチェックするという流れを実践しみてください。
また、チャート式には問題の要求と解法が「CHART & SOLUTION」というセクションで抽象化されています。これを読んで理解するのも最初は良いのですが、丸暗記すると抽象化の力が身につきません。自分の抽象化の適切さの確認として「CHART&SOLUTION」を使うのが実力を磨くためには良いと思います。
学習の“質”を高めても“量”は減らさないで
今回、抽象化の練習方法をご紹介しました。ただ、学習の取り組み方を工夫するからといって、“量”を急減させないようにしてください。ちょっとの勉強でラクをできるような甘い話はありません。そもそも、デキる生徒たちは既に学習の質と量を両立させられているのです。スタート地点に立ったという気持ちで頑張りましょう!大丈夫、受験は長距離走なので挽回できます。
慣れた思考法を変えることは最初は疲れます。試験などの確認機会をモチベーションに活用しながら、抽象化の視点を持って演習を重ねることで、初見問題への対応力は着実に高まっていきます。